よぞら

アゲイン・ザ・スターピーシーズ

忘れることのない記憶。 それは時に胸を締めつけ、時に私の傍で寄り添ってくれる。優しく、儚い、夢のような傷痕。 時が経って私は変わることだろう。環境の変化に順応して、大人になっていくのだろう。でも、それでも決して離せないものがある。それは私に…

音信

携帯は鳴る。 細長い横枠の電子窓が華やげに光って、メールが来たのを私に教える。暗い部屋の中で、それは夜の遊園地の観覧車のように光る。 そこにはメールの送り主の名前。 私の好きな人の名前。私と彼が繋がっていることを示す、二人だけの音信。 うっと…

ゆるふわ的断章

ゆるふわしたのは今日もいく。 生命体はぷわぷわ浮かぶ。 浮かんで街中を駆け巡る。 君が優雅にスプーンをまわすカフェの午後を、灰色に染まった校舎の中を、鮮やかな緑の林の隙間を、誰かが座った電車の座席を、光の影射す夕暮れの丘を、どこでも彼はぷわぷ…

夏の音

窓からは真っ赤な夕焼けが射し込んでいた。 それはもう燃えるような赤で、そのスケールの雄大さと一日が終わる寂寥感を余すところなく表していた。 そしてその陽光を肩で浴びながら机の上に彼女は腰掛けていた。何もせず、茫然とチョークの跡が残った黒板の…